研究内容のご紹介

女性アスリートにおける、競技に影響を及ぼすほどの健康上の問題点として、「利用可能エネルギー不足 (LEA: Low Energy Availability)」、「無月経」、「骨粗鬆症」が挙げられ、総称して「女性アスリートの三主徴（FAT: Female Athlete Triad）」と総称されます（アメリカスポーツ医学会、2007）。さらに、スポーツにおける相対的エネルギー不足（Relative Energy Deficiency in Sport : RED-S）は月経異常や骨の健康のみに限らず、発育発達・精神・心血管系・消化器系・免疫系・代謝内分泌系などといった全身に悪影響を与え、パフォーマンスも低下させる可能性があることが報告されています（図1）（国際オリンピック委員会、2014）。

このことから、月経周期を考慮したコンディション管理やトレーニングプログラムの確立は、女性アスリートが常にベストコンディションで競技に臨むことに重要であると共に、相対的なエネルギー不足に陥ることを防ぎ、FATの予防を含めての健康維持・増進にもつながります。

　そこで本研究室では、運動に対する反応が即時的であり、かつ、測定が簡便であるcell-free DNA（cfDNA）に着目し、ヒトを対象とした研究および基礎研究の両方向から検討しています（図2）。

　ヒトを対象とした研究では、月経状態、および対象者特性を考慮した比較検討を行うほか、安静時ならびに運動負荷前後での身体への影響を調べていきます。また、これと並行して基礎研究では、FATモデルマウスを使用して、低エネルギーによる全身の臓器における特異的なシグナル遺伝子・パスウェイの同定を目標として調べていきます。