研究内容のご紹介

クライオセラピー(アイシング)の分子機序の解明

 本研究室では、クライオセラピー(アイシング、冷却療法)の分子機序の解明に向けて研究を行っています。クライオセラピーはスポーツ外傷の治癒の円滑化や、スポーツ後の疲労回復に効果があるとされ、現場で働くトレーナーや医療従事者によって処方されます。しかしながら、世界的に文献を検索しますと、その効果は不明な点が多く、分子メカニズムも未だ殆ど明らかになっていません。例えば、人や動物に対してクライオセラピーを行った場合、良い効果をもたらすとする報告、変化がないとする報告、あるいは悪化させるという報告が存在しており、ヒトに対する実験結果を統合したシステマティックレビュー(Bleakley C et al. 2004)においても、「実際の所、治療的効果があるのかないのかよくわからない」という事で結論されています。
 未だ明らかでないクライオセラピーの効果を解明するために、本研究室では運動器系を構成する様々な細胞を用いin vitroにて基礎的な実験に着手しました。現在までに得られたデータをまとめると、「クライオセラピーによってミトコンドリア活性が上昇し、ミトコンドリアも増える」という事が見出され、さらに、この現象は至適な冷却温度域にて誘発される事もわかりました(図1, Sugasawa et al, 2016, Int J Sports Med.)。

図1 クライオセラピーがミトコンドリアに及ぼす影響 図1 クライオセラピーがミトコンドリアに及ぼす影響

  現在も分子生物学・遺伝子工学的な手法を用い更なる詳細な解析を行い、クライオセラピーの分子メカニズムの解明に向けて日々精進しています。

このページのトップへ